トロントでワーホリ、プログラマとして働くまでの苦難と最高の労働環境


トロントには2014年の9月から2016年の1月末まで滞在していた。幸運にもワーキングホリデービザ(と観光ビザ)で来て、約1年間プログラマとして働けた。これを書いている2017年9月の今、もう1度トロントを訪れていて、今思い出してもとても貴重な経験だったので今更ながらその時のことを書いてみたい。

なぜトロントに行ったのか

トロントに最初に来たのは2014年の9月だった。7年働いた会社を辞め、3ヶ月のフィリピン留学を終えて、当初はその後日本で仕事をする予定だった。しかし、一緒にフィリピンで授業を受けていた人達が「カナダ行く」「オーストラリア行く」等の渡航計画を聞いているうちに面白そう、と思って勢いでトロントまで来てしまった。1回フィリピンに行ってしまったせいかそのまま日本に戻る気にもなれなかった。

最初の計画はこうだった。

「最初は生活に慣れる為に2ヶ月英語学校に行って仕事を探そう。仕事はプログラマだから探せばすぐ見つかる」

日本の仕事を辞めてトロントまで来たが、別にプログラミング自体は好きだったし続けようと思っていたので同じ仕事をするつもりだった。カナダを選んだのは、30歳以下ならワーホリビザが取れて1年間働ける、というのと、実際に発給されるビザはただの労働ビザ(カナダの短大に1年か2年行って発行されるもの)と同等のビザで労働の制限が無いというところだった。オーストラリアだと6ヶ月しか同じ職場で働けない等の制限がある。

トロントの仕事探しと苦悩

探し始めると分かるのだが、仕事が全然見つからなくて困った。普通にワーホリに来る日本人が現地の仕事探すのが大変なように、経験があるエンジニアでも仕事を探すのは大変だった。もちろん日本人でなくともエンジニア職を探している人はいっぱいいて、同じような境遇な人を見つけては情報交換をしていた。毎日求人を眺めては応募先リストを作ってメールを送り、返事を待った。返事が来たら電話して面接に行き、何回も落ちた。

正確に記録したところによると、最終的には合計3ヶ月で83件メールを送って電話やメールでレスポンスがあったのは13件、面接に行ったのは7件、面接を通ったのが1件だった。最初は仕事を選り好みしていたが、1ヶ月も経つとそんな余裕も無くなって少しでも自分の経験とマッチしていたりやりたいことに近ければとりあえず応募していた。

お金も割と余裕を持って貯金していたのだが、フィリピンに3ヶ月行ってトロントに来て3ヶ月ほど経ち、暫く無職の生活が続いていた。貯金もどんどん目減りしていくのでいざとなったら日本食レストランかカフェで働くことも視野に入れ、尚且つ、節約の為に月$350(約3万5000円)の中心から遠めのシェアハウスにも引っ越した。

カナダの職歴を得る為のインターン生活

その後すぐに「カナダで働いた経験」を履歴書に書く事が返事をもらう為に必要であることが分かってインターンの職にも応募した。幸いその面接は簡単に通ってとりあえず無給で働き始めることになった。

香港系とジャマイカ系のカナディアン2人で始めたスタートアップで、僕を含めた残りの4人は全員外国人インターンだった。構成はエチオピア人、韓国人、トルコ人、日本人。

韓国人は普通にプログラマとして就労経験があったので問題なかったが、トルコ人はGitを使ったことが無いらしく、複数の機能を全部、アセットをまとめて1コミットにしてPushするのでコミットを見ても何がしたいのか全く分からなかった。もちろんコメントはない。

その会社でインターンするのと同時に並行して仕事を探していたら、結構返事が来るようになって働き始めて1ヶ月後には最初のジョブオファーを貰うことができた。ちなみに、カナダのインターンは本当にすぐに辞める。僕は1週間後に辞めたが、仕事が見つかると即日辞める人も珍しくないらしい。

トロントでの快適プログラミングライフ

働くことになったのはeコマースのパッケージを作っているスタートアップで、フロントエンドの仕事をすることに決まった。給料はトロントのプログラマの平均から言うとやや低いが、日本での給料よりは貰えたので個人的には満足だった。

社内のフロントエンドはカナダ人2人、中国人1人、僕の4人だった。バックエンドはロシア人が2人。それとは別にロシア人のUIデザイナーが1人。上司は2つ年下のカナダ人女性だったのだが、めっちゃプログラミングできるし、ほんと素晴らしい人だった。IBMから転職して来たと言っていた。

カナダで仕事するにあたって最初に気になっていたのは労働時間だった。蓋を開けてみるとみんな9時〜9時半に来てだいたい5時半くらい前には帰っていた。早いと4時くらいに理由も言わずに帰る。さすがに2時くらいだと「病院行くから」「家族の面倒見ないといけないから」とか言い残して帰って行く。また、半休という概念は無く2時に帰ろうが1日出社したとしてカウントされるらしい。更にランチタイムに「私たちは働きすぎだ、5時間で十分」みたいな事を話していた。電車やバスも4時過ぎから混み始める。どうやらカナダ人の認識としては「4時か5時には帰るがそれでも働き過ぎ」らしい。

もう1つ気づいたことは、個人の責任の範囲がしっかりしていることだった。割と日本だとプロジェクトやサービスの必要に応じて何でもやる事が多いけれど、カナダはそういうのが全く無かった。本当にフロントエンドエンジニアはそれしかやらない。人がいなくなればその分他の人を雇う。勉強しなきゃいけないことを絞ることが出来て個人的には働きやすかった。

出来が悪いとすぐにクビになる、みたいな噂をネットで見ていてビクビクしていたが、隣にいた中国人はあんまりコード書けてなかったけど全然クビになる気配は無かった。それだけいいエンジニアを採用するのはカナダでも難しく、普通に日本人のレベルで勤勉に働いてたらまずクビになることは無いと思う。

最後に、締め切りに対する感覚が全く違っていた。日本だと締め切りが決まっていて、追加タスクがあったとしてもその締切日は変わらない(ことが多い)。カナダだと追加タスクがあると締め切りが伸びるかそのタスクを諦める。残業で解決するという発想が最初から無いように見える。

お酒が好きな人には残念だが飲み会に相当するものは一切なく、超豪華なクリスマスパーティが1回あるだけだった。あの会に参加できたのは本当に幸運だった。

ワーホリでもトロントでの経験は生きた

ビザの関係で実際に働けたのは1年くらいだったが、とてもいい経験だったと思う。トロントは英語が完璧ではない人にも物凄く寛容な場所で、僕みたいな日本人でも(なんとか)仕事を見つけることができた。

この経験はその後日本に戻ってGengoに就職するときにも物凄いプラスになったし、今回ロンドンに行くにあたって推薦状が必要になったのだけどこのトロントの会社で今も働いている上司にお願いしたら快諾してくれた。なのでここで働いてなかったら今の自分は絶対に無かった。

もし日本で働き疲れたら、「海外で働く」という選択肢を視野に入れてもいいと思う。それはめっちゃ凄いプログラマじゃなくても英語を勉強すれば普通にできる。実際の仕事探しのコツや面接の準備の仕方などは別の記事で書いてみたい。

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